所有不動産が事故物件になると?

国土交通省は2021年5月20日、過去に人の死が発生した物件の賃貸・売買時の告知義務についてまとめたガイドラインを公表し、今まで明確でなかった告知義務の基準を初めて明示しました。
ガイドラインの内容と今後賃貸オーナーが注意すべきポイントについて紹介します。

ガイドライン制定の理由

他殺・自殺・事故死などがあった不動産を売却または賃貸するときには、売主・貸主は、その事実を買主・借主に対して伝えなければいけないという告知義務があります。このような「事故物件」には心理的瑕疵があるとされ、特に居住用不動産においては、心理的瑕疵の有無が契約の判断に大きく影響する可能性があるからです。

心理的瑕疵の告知の根拠とされる宅地建物取引業法第47条では、告知すべき事故の範囲や、どのくらいの期間告知するかというルールは明示されておらず、不動産会社によって判断が異なることがあります。
そこで、国土交通省は有識者の検討会を経て、2021年5月20日に「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いについて」と題するガイドラインを公表。
ガイドラインでは、事故物件の告知義務の範囲や期間がかなり詳細に明示されており、今後この基準が周知されることにより、心理的瑕疵に関するトラブルを未然に防ぐことが期待されます。
今回のガイドラインで示されたのは、アパートなどのいわゆる居住物件でオフィスは対象外となっています。

告知義務の範囲や期限について

殺人や自殺、事故による死亡発生の告知義務の期間については、賃貸の場合、事故の発生からおおむね3年間としています。
つまり、事故から3年経過すれば宅建業法上の告知義務はなくなることになります。
専有部分や室内で発生することを想定しており、隣地や建物前の道路など外部で発生した事故は対象外としました。ただし、アパートのような集合住宅の場合は、ベランダ、共用玄関、エレベータ、階段、廊下などのうち日常使用する場所は告知義務の対象に含まれています。
事故死か自然死かが明らかでない場合でも告知義務はあるとしました。
一方、売買は賃貸に比べてトラブルになった場合の損害額が大きいため、告知義務の期限は設けられていません。つまり事故の発生が何年前であっても告知義務はなくならないことになります。

自然死・家庭内事故による死亡の場合

老衰や病気などの自然死は、当然予想されるものです。統計上も、自宅での死亡の9割以上が老衰・病死による死亡であることから、一般的なものとして告知義務の必要はないとされました。
事故死であっても、自宅の階段からの転落や入浴中の転倒、食事中の誤嚥など、日常生活の中で起こった不慮の事故による死亡の場合については、当然予想できるものとして告知義務の必要はないとされました。
このようなケースでも、発見が遅れたことにより遺体の腐乱が進み臭気や害虫が発生するなどして特殊清掃が必要になった場合には、事故物件としておおむね3年間の告知義務を負うことになります。

ガイダンスの制定により、告知義務の期間が明確になったこと、自然死の告知義務がないことが確認されたことで賃貸経営がよりクリアになり、賃貸経営上の対策も立てやすくなることから朗報と言えるでしょう。

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